四万六千日
7月9日、10日には浅草の浅草寺の境内で「ほおずき市」がある。この日にお参りすると四万六千日分の御利益があるという。10日が女房殿の誕生日なので、毎年そのイベントとして毎年お参りしている。彼女の21歳のときからなので、もう31年になる。数年目から、六区の「天健」という天ぷら屋さんで名物のかき揚げを食べるのも恒例になっている。年によっては、うまく休みが取れず、参詣が遅くなって、浅草寺の本堂の扉が閉まってしまったり、かき揚げを食べさせてもらえなかったりしたことが何度かあった。
去年も、ちょっとした油断で参詣のあと「天健」に行ったら、すでに火が落とされていた。こういう年は、たいていろくなことがない。縁起が悪いということもあるけれど、むしろ自分たちの行動がコントロールできないような状況に陥っているのだ。年に一度の記念日を全うに演出できない年が、よい年であるはずがない。
最初は恋人だった私と女房どのも、数年後には子どもができ、家族連れの客となった。しかし、今年は息子一号は古書組合の市場の係のため抜けられず、息子二号は北海道だから来られず、ついに女房殿と私の二人きりでお参りすることになった。26年ぶりのことである。
朝食後に、あらかじめ御徒町で買っておいたプレゼントを渡し、バーゲンで買っておいた新しい服を着て、二人ででかけ、いつもは夕食にするかき揚げをまず昼に食べてから、浅草寺にお参りした。おみくじを引いたあと、もう一度六区に戻ってモツ煮屋で一杯飲んだ。若いころは、花屋敷によく行ったし、銭湯に入ったこともあった。最近は老舗の喫茶店に入ることが多かった。毎年、気にはなっていたが、モツ煮屋の椅子に座ったのは初めてだ。
ほろ酔いになり、バーゲンで買った服の直しがあるものを受け取って、やはりバーゲンのサンダルを買った。お茶を飲んで帰ろうと思ったが、ハッピーアワーの看板を出しているバーがあったので、カクテルを一杯ずつ飲んで帰宅。女房殿は。「よい誕生日だったわ」と言ってくれた。
おみくじは女房殿は半吉、私は末小吉で、あまりよい目ではないが、凶でなかっただけよかったとしよう。吉は、息子たちにでも譲って、我われは低空飛行でも良いから平穏な生活ができればいい。
店は、女房殿(佐藤店長)が、本を棚にさすようになってから、お客さんの評判がよくなった。これからは、もっと楽しんでもらえるようになるだろう。