人間は不合理なものである

おでこに痣ができた。小さな赤い痣だが、癌だといけないので病院に行った。医者の見立てでは癌ではないらしい。しかし、何だかわからない。サルコイドーシスという病気かもしれないということで、血液検査をした。
皮膚や内臓に良性の腫瘍(肉芽腫)がたくさんできる病気で、たいていは数年のうちに自然に治ってしまうが、1割ぐらいは慢性化するらしい。さらに稀には、心臓に入り込んで死に至ることもあるそうだ。
実際に死ぬのは病気が相当に進行してからだろうから、そのような事態に至るまでにさまざまな症状があるはずだ。だから、そんな心配はないはずだが、話を聞いてから心臓がドキドキする。いや、それらの情報は「家庭の医学」に書いてあるので、私も読んで知っていた。しかし、「たいした病気ではありませんよね」と私が同意を求めたら「いや、心臓に入れば死にますよ」と美人の医者がいうものだから、その言葉が血液検査の針を通して心臓に突き刺さった。
今日がその結果を聞く日だ。
開院時間に少し遅れて病院に着き、女医に名前を呼ばれるのを待った。結論としては今回の検査項目である「ACE」については以上がないとのことだった。しかし、これが上昇していれば間違いなくサルコイドーシスだが、正常だからといってそうではないとは言えないという何ともあいまいな結果だった。
その他にも一般的な検査項目があり全身の炎症などもないので、何かの病気が進行していることもなさそうだ。だから心臓の心配はする必要がない。その一つ一つの項目についてこれは何? これは何? と質問していたら、あんまり聞かないでと言われた。
病気の検査結果を聞くというのは恐ろしいことである。しかし、考えてみれば病気は検査してから悪くなるわけではない。日常的に進行していて、検査でそれが明らかになるだけだ。だから、普段から恐怖するべきなのであって、検査のときに特に怖くなるのは合理的ではない。そのとき祈っても、その祈りは時間をさかのぼって過去の改変をする祈りになってしまう。
人間は不合理なものである。
昼飯は病院で時間をとってしまったので、すき家で牛丼。午後は店長と宅買。西東京市でなじみのお客様から美術書など400冊。渋谷の大学で、やはりなじみのお客様から社会科学系専門書を800冊。店長と共に遅めの帰宅になって、夕飯は冷凍餃子。