その本を、活かしていけるか
出張買取3件。しかし、真ん中の1件は不調。
最初のお客さんは90歳過ぎのご高齢の方で、まずソファーをすすめられて、河合栄治郎など「歴史上の人物」との交流をひとしきりお話しいただき、おもむろに品物を拝見。値段が折り合わず、最近の古書事情などをこちらからお話しして、ご理解を得ようと思ったのだが、うまくいかずでは謝って引き揚げようとすると、まあまあということで、交渉再開。そういうことか、やはり我われ高度成長期以降の子供はなにほどかせっかちのようだ。
最期の一件は、やはりご高齢のご夫婦で超高級マンション。なにしろ、エントランスが広い。オートロックのガラス戸のなかにまたホールがあって、コンシェルジェというのか、クロークというのか、ホテルのロビーのようになっていて、クリーニングを受け付けている。二棟ある建物の間は広い芝生の中庭になっていて、ビアガーデンでも、バーベキュー広場でもできそうな、住人専用の公園だ。
マンション住まいは狭くてダメね、何も置けないわと、奥さんはおっしゃるが、いちおう一戸建てのぼくの家より広々としているぞ。息子さんが集められたという、貸本まんがなどが中心だが、いつかご主人の本も売っていただこうという色気を出して、必死の査定。A男はLPレコードを発見。買いたそうにしていると、欲しいのなら売ってあげるわよ、の一声。
やはり、値段より、その本を今後活かしていけるかどうかをお客様は見ていらっしゃるのだ。