よいアイディアは、夢の中で作られる
新入社員がたくさんいて混んでいるかと思ったが、さほどでもなかった。吉祥寺を9時1分発だから、出勤の人はすでに乗っていない。学生もまだたいていは休みだろうから、当然だったか。
本日も、古書会館で「日本の古本屋」リニューアルのための会議。元々は午前中に終える予定だったはずの業者さんとの打ち合わせだが、あらかじめこちらで話をまとめていなかったので、5時までかかってしまった。学校のチャイムを聞いてようやく終了させた。あまりに疲れたので、内輪の会議はできない。したがって比較的早く終わったので、恒例の会食はやめて、即解散帰店。ちょっとだけ店に顔を出すことができた。しかし、この雨で売上は悲惨なものである。
普通の図書館員や新刊書店の従業員に較べて、遥かに深くて広い本に関する知識を持っていると、かつて古書店主たちは自負していた。たしかに、仕事の性質上、広い範囲の本に触れることができる古書店は、本に関する勉強をするにはうってつけの場所だ。
しかし、ネットにより書誌情報が個人や各社のレベルから解放されて、版元や取次など出版流通に図書館を巻き込んだ形で共有されるに至って、各々が利用できる知識は格段に多くなった。古書店はこの情報タンクから疎外された形になり、古本屋の親父が持つ知識にも独自なものがあると言いつつもカビが生えかかっているのが実情だ。
そこで、ネットなどですでに共有されている知識については、国立情報学研究所の協力をえて利用しようというのが今回の取り組みである。情報をいただくからには、我われ古書業界も何か相応の貢献をしなければならないが、古書店ならではの古い本や珍しい本などの知識を公共機関に提供していくことが考えられる。事実、図書館でもその存在が知られていない古書はまだまだ多数ある。
古書店による社会貢献は公共機関を通してだけではない。図書館にはない書誌情報を作成し、社会に提示することにより、実際に収集したい研究機関や個人を掘り起こすことにつながるかもしれない。人々が、さまざまな本に出合うための手段を提供して、我われも売上を伸ばすことができる、お互いに得をする話なのだ。
さて、古書店には、本に関する知識がたくさん埋もれているのだが、これを集合知にくみ上げていく仕組みをどう作るか。我われは協同組合であって、営利企業ではないので、利益から予算をたくさん出すというようなやり方はできない。
個々の古書店が、各自の商売を頑張ることによって、自動的に知識が集合するような仕組みを考えなければならない。自分の持っている知識を少しずつ「日本の古本屋」にわけてくれることによって、本人にも利益が返ってくるようなインセンティブをいかに仕込むか。
なかなか難しい課題だが、いわゆる書誌情報の部分はwikiの仕組みによって作れるのではないかと思う。みんなが参加することによって、一時的には間違いが生じても、全体としてはだんだん良くなるはずだ。
ただし、単なる読み物ではなく、商売に使うカタログを作るのだから、実際の取引の場面では、ちょっとした間違いが致命的な結果を引き起こすこともある。なかなか、難しいところである。
よい手段はないかと考えたところで、あしたも休日返上で大学研究室の片付け(4000冊の予定)をすることになっているので、もう寝よう。よいアイディアは、夢の中で作られることが多いから。