後半は女房殿に縛ってもらった

世の中で私が怖いものといえば高いところとゴの付く虫である。子供のころは平気(突然現れれば驚いたが、別に怖くはなかった)だったが、今はなぜか見ただけで血の気が引いて腰が抜けたようになってしまう。
古本屋にとっては、かなり致命的な弱点である。古本の買取などのときには、普段さわらない場所を暴くこともあるので、季節外れのそれに出くわすこともあるのだ。恐怖症の私は、その瞬間に買取を打ち切ってしまう。さすがに、急に帰ることはなくなったが、体に力が入らなくなるので、それ以上本を縛ることができないのだ。最近は、誰かしら助手を連れて宅買に出向くので、あとは任せて家の外に出てしまう。車の中を整理したりする振りをして、彼らの仕事が終わるのを待つのだ。
とくに、屋外の物置やガレージなどに段ボール詰めで本が置いてあるときなどが危ない。そういう所に置いてある本は、買取できるかできないかのギリギリのものが多い。あとは古紙の日に出してほしいなと思ったところで遭遇したら、「これぐらいにしておきましょうか」と言いやすい。お客さんも、たいていは納得してくれる。
夕べは、店員のAR子、SN子に連れられて中野までトルコ料理を食べに行った。ひと皿は大きくなさそうだし、珍しいので、いろいろに注文したら、結局食べ過ぎになった。クスクスなどの澱粉も想像以上に効いたが、肉をたくさん食べると夜よく眠れない。夜中に何度か目が覚めてしまった。睡眠薬を飲めばよかったのだが、浅くても眠れていたので、飲みそびれたのだ。
すっきりしない朝を迎えたので、いっそ目覚ましに朝風呂に入ったのが、かえっていけなかった。今日は一日何となく眠い。従業員や、家族にガミガミ言いながら、とにかくもここ数日に仕入れた本を片付ける。乱れきっていた店内も、なんとか次第に整理されて、行き場のない本などはなくなってきた。
普段の買取は月に2万冊から3万冊程度である。しかし、3月の買取は4万冊を超えて、もしかしたら5万冊ぐらいになるかもしれない。春は引っ越しシーズンだから買取も多い。本来なら、改装などしてはいけない季節である。実は去年の秋に予定していたのだが、諸般の事情で半年ずれ込んだのである。
本日の宅買は一軒のみ。もう少しあったのだが、1000冊弱を買い取った。後半は、一緒に行った女房殿に縛ってもらった。演劇書や、全集、文芸理論書など。
昼食は家族三人で、市場仕入れと仕事の割り振りに関するタフな交渉をしながらのパワーランチ。夕飯は、やはり家族三人で吉祥菜館。飲み会ではなく、メシである。