日本の古本屋シンポジウムに行ってきました。

日本の古本屋シンポジウム「滅亡か、復権か - 大規模デジタル化時代と本の可能性」に行ってきました。
タイトルの過激さに較べて意外なほど古い認識の発言が(特に古書店側に)めだちました。とくに、冒頭で小沼理事長が十数年前の「東京の古本屋」アンケート調査を引用して、今後の古書店の生きる残る道は専門店化しかない、という結論を繰り返しておられたのには、少し驚きました。すでに間違いだったことが証明されたのではないかと思いますが。
あの調査では「専門書を扱う店」と「専門店」が混乱していますし、「古書は拡大再生産しない」などの基本的認識に誤りがあります。
本の多くは専門書です。理工系専門書全般を扱う明倫館は「専門店」でしょうか。一誠堂は? 巌松堂は? 明らかに専門店ではなく、広い範囲の専門書を扱う総合古書店です。
この10年間の古書店の進化は、セレクトショップとネット古書店において顕著だったのはあきらかです。セレクトショップはあるレベルの本を広い範囲から収集して一同に並べるという意味では、先に挙げた「専門書を扱う総合古書店」と同じスタンスです。違いは、専門書の本屋が選択の基準をアカデミズムなど客観的なものに置いているのに対して、セレクトショップでは店主のセンスなど主観的なものに選択の基準があるということです。
扱う本の範囲を狭く取ることで成功したのは、むしろ「一般書の専門店」たるBookOffの方です。
国会図書館長の長尾真さんのお話は、公表されていることばかりで、ものたりませんでした。1968年までの本をデジタル化するための著作権のあつかいについても、突っ込んだ話が聞けるのではと少し期待したのですが。
金額の話は出なかったのですが、著作者を探すのにかかるコストが2000円以上、みつかった場合に払われる料金は500円程度のはずです。ならば、著作権者の見付けやすい最近の本の権利をあらかじめ予約しておく方が将来のコストを抑えられるのではないかと思います。また、ほとんどの本は40年以上たって再書籍化されることはないと思いますが、一部の本はずっと売れ続けます。そういう本と、誰も読まない本の著作権料が同じでいいのでしょうか。この価格設定はまたしても、「メディアについている値段」ということでしょうか。
大日本印刷の森野鉄治さんは、カピバラ堂さんの質問に答えてBookOffの買収は返品の本を捌くためだと(暗に)言っていました。でも、本当に売れ残りの本は安くすれば売れるのでしょうか。本の価格弾力性は高くないと思うのですが。売れないものは安くても売れない、というのが日々Amazonの1円書籍を眺めている古書店主の実感です。
最後に、パネルディスカッションで「相場は秘密」というような話が出たのですが、今どき、もう秘密は無理なのではないでしょうか。なぜ秘密なのでしょうか。何か後ろめたいことがあるのでしょうか。情報の非対称性から利益を得るというようなビジネスモデルはもう通用しなくなると思うのですが。
日本の古本屋を見れば相場はあきらかです。スーパーでさえ仕入は売上の30%から50%です。流通にかかるコストから、堂々と利益を得ればいいと思います。