レトロぽるのコーナー新設しました
先日、レトロポルノの本をたくさん買い込んだことはすでに書いた。その本は、清水正二郎の訳書が中心で、200冊を超えていた。
清水正二郎とは「黒パン俘虜記」で直木賞を受賞した作家胡桃沢耕史その人(本名)である。浪速書房から発行の世界秘密文学選書1~3期53冊(ぐらい)、ナニワ・ポケット・ブックス、世界発禁文学選書(20冊ぐらい発行か)、世界の女の物語(全10巻)その他その他、ほとんどを独りで訳している。もちろん翻訳ではなく著書も、「裸体の青春」「緋ちりめん武士道」「情痴の祭典」など、数え切れないほどある。よくこんなに仕事をしたものだ。
肉食主義なので、戦時下の食糧難に耐えきれず、また号令されるのが嫌いな徹底自由主義者であるため、日本に住んでいられず蒙古を放浪していたという、よくわからない経歴の持ち主でもある。
よみた屋にはいわゆる「アダルトもの」はないのだが、人間に関する本を扱うので、性の問題をまったく無視することはできない。
フロイトは性的に魅力があることを人は「美しい」と感じるのだ、と言った(出典は忘れた)。言われなくても、芸術の半分は性を取り扱ったものだろう。社会は女と男で構成されているのだし、多細胞生物の多くはメスとオスでできている。文学も歴史も科学も、性の周辺領域である。
よみた屋はひねくれた本屋なので、著者の意図とは違った読まれ方をする本が好きだ。たとえば、マッハ(科学から哲学)、フロイト(医学から文学)などである。パラケルスス、プラトン、道元、古い時代の書物はみんな多かれ少なかれ、意味を変えて読み継がれている。しかし、最近の本の意味を変えるのはちょっとしたワザが必要だ。
そこで、一世代か二世代まえの実用ポルノを、よみた屋では「レトロぽるの」と称して、風俗資料に変質させることにした。
前々から、扱ってはいたのだが、こういう物はあまりちょくちょく仕入れできるものではない。ボリュームがなかったので、コーナーが消滅しかけていた。今度、清水正二郎の本がたくさん入ったので、復活させた。
下の写真は、「現代猟奇先端図鑑」(昭和6年 新潮社) 本来は函付の本だが、これは中身だけ。レヴューの楽屋からクライスラービルまでを一緒くたにした「エロ・グロ・ナンセンス」の大百科。