うまい! 安い! 腹いっぱい!

昨日は女店員Mを連れて外回りをした。途中で昼ごはんを食べたのだ。たいていは一緒に行く店員の希望を聞いて店を選ぶのだが、昨日に限っては、月曜日に食べられなかったカツ丼に未練が残っていて、松庵小学校近くの「松月庵」に行った。
松月庵は郵便局の集金員が集まる、味・量・値段の三拍子揃った店だ。評価するなら、イメージではなく実質において人民の味方というべきであろう。格好をつけたところはないが(したがって、デートには向かない)、本当にうまい。タクシーの運転手もよく利用しているのだが、客には教えないかもしれない。
東京都心にも近い武蔵野で、そば粉のうまさを引き出している店はいくらでもある。だが、せいろに乗った麺のあまりの少なさに惨めでひもじい思いをしたことが君はないか。「大盛」と言ったら、「どなた様も2枚お召し上がりです」と答えられて、だったら初めから倍の盛りにしろ、と顔を赤らめたことはないか。
松月庵では、そんな心配は無用だ。カツ丼セットを頼めば、通常のカツ丼と普通の盛そばが一人分の値段で食える。肉体労働者ならば、さらにカレーライスを頼むこともできるのだ。
その上、松月案には美人の店員もいる。街で道を訊いたら絶対に答えてくれそうもない、怖いような美人がホール係をしているのだが、娘ではなさそうだし、お嫁さんにしても夫になりそうな男はいないので、謎である。(大阪では、どんな美人でも、道を訊けば親切に教えてくれるが、東京ではそうではない)。
この松月庵で最もうまいものは、タヌキそばとカツ丼である。タヌキそばは店内では「ハイカラ」と呼ばれていて、当然のごとく最人気メニューなのだが、僕は主にカツ丼を好んでいる。
ご主人と思われる、そろそろご老人と呼びたくなる年代の男性が作るカツ丼は絶妙で、かつて、某女の子を連れて行ったら「カツ丼って、こんなに美味しいものだったんですか」と顔を上気させて、いやホントに可愛かった、というのは余談。食べるタイミングによって、多少当たり外れはあるが、サクッとしたカツをトロッとした卵でくるんだ、基本に忠実なカツ丼である。
一番いいのは、12時過ぎごろに行くことで、込んでくると、若くないご主人が疲れるのか煮えすぎの場合が多い。昨日は2時近かったのだが、むしろピークを過ぎたのがよかったのか、今まで食べた中でも絶妙の火加減。途中で、七味唐辛子を掛けたのが惜しまれるほどの仕上がりだった。
もし、五日市街道の松庵近辺を車で走る人があれば、とりあえず松月庵に寄ってみることをお勧めする。どんな意味でも失望することはないはずだ。