新書を読むシリーズ『病気にならない体はプラス10kg』
2006年の日本人の平均エネルギー摂取量は1891キロカロリーだそうである。これは終戦直後の1946年(昭和21年)の1903キロカロリーよりも少ない。(厚生労働省「国民健康・栄養調査」)
飽食の時代などといわれていたが、日本人のカロリー摂取量は1970年の2210キロカロリーをピークに年々減り続けて、ついに飢餓の一歩手前まで減少していた。驚くべきことである。捨てる分まで含めたエネルギー供給量も、世界の平均を割り込んでる。
この本の著者柴田博によれば、20歳代の体重プラス10キロ程度がもっとも望ましい中高年の体重だそうである。若いころと同じスリムな体を維持することは決して長寿にはつながらないという。中年になって腹が出てくるのは健康な印であって、脂肪には衰えた腹筋を代行して内臓を下から支える役割がるそうだ。
成人病予備軍が激増してるように見えるのも、診断基準が異常に厳しいからで、医学的には全く必要のない(死亡リスクがもっとも低い)人たちに、治療と称して、不必要な投薬が行われている。たとえば糖尿病は診断基準が変わったために患者数が増えたように見えるだけだそうだ。さらに、これは患者数を確保しようとする医学会の陰謀だとまで示唆してる。
そこで、著者の健康法は「動物性タンパク質を充分に摂る」「魚と肉の摂取は1対1の割合に」「さまざまな肉を食べる」「油脂類を充分に摂取する」「牛乳を毎日飲む」など、ダイエットの常識に反したものが多い。
というより、ダイエットはするな、と言っているのだ。なぜなら、タンパク質をあまり摂らず、中年になっても若いころと変わらず痩せている発展途上国は例外なく短命国で、長寿国は肉をたくさん食べる先進国にしかないではないか。
太っているほど早死に、というわけではないのは事実だと思う。著者が言うように、ちょうどいい体型というのがあって、痩せていればいいというわけではないだろう。どんな食品も摂りすぎれば悪いに決まってるが、全く摂らないのも良くない、という主張もうなずける。
たしかに、街で見かける若い女性の中には飢餓状態を思わせる異常な痩せ方をした人がたくさんいる。そうでない多くの人も、もう少し食べたほうがいいのではないかと説教したくなるぐらい小食であることが多い。うちの若い従業員にはちゃんと食事をしろといつも言っているが、食いすぎだよと言ったことはない。
だれしも、現代日本人は痩せすぎなのではないかと直感的に思ってるだろうが、この本であげられている数字は衝撃的だ。ダイエットと健康に関する常識を根底からくつがえす本。
ただし、少し前の「睡眠時間が長い人は、病気のリスクが高い」という統計もそうだが、「痩せた人」や「睡眠時間が長い人」にはすでに体の調子が悪くて寝込んでいる人や痩せてしまっている人が入っていると思われるので、数字をそのままは信用できない。