一匹の恐竜の長いしっぽ
アマゾンが学生に10%のポイント還元をすると言うので、いくつかの出版社が取引をやめたそうだ。書籍は再販商品だから、メーカーが小売値を決められる。それに従わない小売店に品物を卸さなくても独占禁止法違反にならない。10%ポイントは実質的に値引きだから、これを許すと中小の小売り書店が生き残れなくなる、そこで取引を停止して一石を投じよう、ということ。
しかし、これは少し筋が悪い話ではないだろうか。学生はもともと大学生協で1割引の本を買っている。むしろアマゾンは大学生協への対抗上、ポイント還元を仕掛けているのではないか。教科書や学生生活の必需品も販売する大学生協を脅かさないために、というならわかるが、近隣の中小書店には果たして影響があるのだろうか。
アマゾンの味方をするわけではない。彼らはロングテールなどと言っているが、あれは眉唾だ。鶏口牛後という言葉がある。大企業である牛も、小さくても独立した企業である鶏も共存できたのが今までの日本だ。しかし、そこに恐竜がやってきて牛も鶏も飲み込もうとしている。それがロングテールだ。多くの零細企業がそれぞれにやっていたことを、一匹の恐竜の長いしっぽにしてしまうのがアマゾンである。
アマゾンは実際に便利だ。僕も、いろいろな商品をアマゾンで買っている。それだけではない。よみた屋の商品をアマゾンを通じて売ることもしている。多くの場合、アマゾンで買ったつもりでも、本当の売り手は別にいて、アマゾンはその仲介をしているに過ぎない。手数料を取られるが、それでも利用せざるをえないほどアマゾンというサイトには販売力がある。
中小の小売店が危機なのだとすれば、その理由はなんだろう。本以外のものについて言えば、アマゾンは必ずしも他より安くはない。システムが便利なので、多少高くても買ってしまうのは、自動販売機と同じ原理だ。スーパーの方が安いとわかっていても、そこまで行く手間やレジに並ぶ時間を考えれば、自動販売機で缶コーヒーを買ってしまうのだ。
本は再販商品だからメーカーが小売値段を決められる。それなのに、小売店はメーカーの卸値を拘束できない。たしかに出版社にとって効率的な取引先と非効率な取引先はあるだろう。だが、だからといって再販商品であるものを他よりずっと安く卸したとしたら、不公平と言えるのではないだろうか。
きのうは仏教関係400冊など、出張買取3件。やっと絶不調から脱出した。仕入れが少なめだった間に、たくさん本を整理したおかげで、お店の売り上げ通販ともに好調と思ったとたん、本日は天気のせいかお客さんが少なかった模様。体調は今だ絶不調。ヨガの眠りにつかせてもらった。一日中、船酔いの気分。