ピラミッド帽子よ、さようなら

息子一号とMT2店を任せてお休みをもらう。乙骨淑子『ピラミッド帽子よ、さようなら』の初版が手に入ったので、前夜から読み始めた。少し寝坊して、読書で一日を過ごす。日常に重なり合うようにして別世界が現れるファンタジー。中学生の男女が、葛藤を抱えながらも困難に立ち向かう物語で、たとえば天沢退二郎の『光車よ、まわれ!』が好きな人にはきっと面白い。

発表当時の1980年ごろに高校生だった私には、懐かしい情景が現れる。ただし、主人公たちの風俗や言葉遣いは当時としても少し古くさい。

早世した作者の遺作で未完だが、編集者である小宮山量平によるエンディングがついている。後の版(全集「乙骨淑子の本」、復刻版理論社の大長編シリーズ)では削除されている。たしかにこの補作は蛇足だ。そもそも、一般的にファンタジーは結末がないほうがいい。

この本はすぐには売らずに、しばらく手元に置いておこう。午後には読み終わってしまったので、石川淳選集に手を伸ばす。