浅草寺のほおずき市
明日は女房殿の誕生日である。数ヶ月の間、一足早く歳をとった彼女が年上ということになる。毎年、この時期には浅草寺のほおずき市に行くことになっている。観音様にお参りし、渋団扇とほおずきの鉢を買って、伝法院通りにある「天健」で掻き揚げ定食を食べるのが恒例である。この日の参詣が四万六千日分の御利益があるというほおずき市は7月9日と10日。本来は明日行くべきなのだが、どうしても古書組合関連の会議が抜けられないので今日行くことにした。
かねてから約束していた、本の出張買取(宅買)が府中に一軒。天気が心配なので、早めに昼飯を食って直行したのだが、多磨霊園のそばで、通じているはずの道が細くて通れない箇所(地元の人はミラーを倒して通るらしい)があり、到着に手間取る。行ってみれば、期待していた絵本は少量で、玉川百科、国語大辞典、文学全集などがたくさんある。これは引き取り不能である。お客様と一緒に、嘆息している内に予定時間が迫ってきた。少し雨も降り始めた。買取可能な少量のみ、縛って車に積み、とりあえず車庫に車を置いて、予定を少しオーバーして店に戻る。
店に残る従業員に、経過を伝えて出発したのが4時30分。予定より30分遅い。電車の接続はよくて、浅草駅に着いたのは5時半よりも前だから、これなら大丈夫と、まずは渋団扇を買って観音様にお参り。いつものお祈りをして、僕のおみくじは大吉、息子一号は吉、しかし女房殿に凶が出たので、凶の札を所定の場所に結びつけてから、引き直してもまた凶が出た。三度目の正直で、吉が出には出たが、念のために厄除けお守りをいただいて、あとはまっすぐに天健に向かう。
6時ちょうどに到着した天健では、しかし御主人がもう自分の飯を食べていた。最近、高齢化したご主人は早めに店を閉める傾向なので少しは心配していたが、6時ですでに終わっていたとは。ここの掻き揚げは、普通の平べったいそれではなく、ソフトボールぐらいの爆弾形で、小エビ、イカ、玉ねぎといった具が縦横にからんだ迫力のあるものである。三人で残念なりと息を吐いて、まだ出ているのれんの前で写真だけ撮った。
ほおずき市の日にこの店に寄る習慣は、息子一号が生まれる前からだから、もう三十年近く続いている。その間、一度か二度、閉店に間に合わなかったことがあったが、その年はろくなことがなかったように記憶している。自分達のいろいろな事がコントロールできないから、食事にも間に合わないのだ。そんなときは、商売もうまく行かない。
仕方がないので、近くの有名天ぷら店へ行き、こちらもなかなか美味しい天ぷら定食を食べて、ここで女房殿にささやかなプレゼントを渡し、まだ買ってなかったほおずきの鉢を買って、吉祥寺に帰った。息子一号とはここで別れて、新刊書店でメルロ=ポンティの文庫本などを買って、女房殿と二人カフェでデザートを食べてから帰宅。
それにしても、店の売り上げが悪い。手を打たないと、大変なことになりそうだ。