本を捨てるのは重要な仕事なのだ

図書館が市民から本の寄贈を募ったが、大半は図書館のほしい本とマッチングせずに廃棄したり、リサイクル市に出したりしているという記事が朝日新聞の夕刊に載っていた。http://www.asahi.com/national/update/0712/TKY200807120078.html
古本屋がお金を出して買うものを、ただで集めようというのだから、初めから無理な話だろう。しかも欲しいのは次の世代のために保存するべき専門書などではなく、貸出希望の多いベストセラー本だという。そういう本の人気は半年ほどだから、引っ越しや世代交代でいらなくなった本には、ほとんど含まれていないのだ。
図書館職員が「図書館が本を捨てるのを代行しているようなもの」と嘆く、 ともある。本は読んでも減らないし、ほうっておいても腐らないし、洋服のように新しさが重要なものとも言えないから、一般の人は捨てるのに抵抗がある。しかし、一方で本は同じ物がたくさんあって、需要は出版された直後に集中しやすい。神奈川県秦野市立図書館は200万部以上売れている「ホームレス中学生」の寄贈を望んでいるそうだが、200万部をそのまま次の世代に遺せるはずがない。どこかで誰かが判断して捨てるしかないではないか。
プロフェッショナルなら、遺すべきものと捨てるべきものを、きちんと判断してほしい。貴重なものをしっかり保存するのと同じくらい、世の中に多すぎるものを廃棄して調整するのは重要な仕事なのだ。
同じ新聞の中の方に、近松門左衛門の「曽根崎心中」初版本が、富山県の図書館に同市の旧家から寄贈された、という記事も載っている。http://www.asahi.com/culture/update/0712/TKY200807120099.html 商品として販売すれば数百万円以上はするだろうが、多分いろいろな古い文書と一緒に保存されていたと思われるので、専門家が調べなければ発見されなかっただろう。図書館にはこういう仕事をしてもらいたい。