広く人材を募集しています
午前中は、息子2号の運動会を見に行って、午後から神田に回る。本日の出品は、季節柄か取引不成立(ボー)が多い。4分の一ぐらいか。出来た(取引が成立した)品物も、ちょっと安いように思う。どこの店でも仕入の多い時期だ。一般的な本(めずらしくない本)は、買い手が少ない。
現在よみた屋では、従業員を募集している。応募はあるのだが、条件が合わずなかなか採用にいたらない。今年は就職売り手市場だそうで、新卒、第二新卒はほとんど見込みがない。いきおいアラサー(30歳前後の、もと就職氷河期組)に期待するのだが、二つのネックと二つのハードルがあってなかなか働いてもらえない。
ネックは給料などの条件と、営業時間だ。給料は通常の小企業の新卒程度なのだが、ロスジェネ世代の収入としてはたしかに不満だろう。しかし、われわれも零細企業なので「年齢別給与制度」など作るべくもない。古書店の仕事に経験ありというなら多少考慮しようもあるが、全く違う職種にいた人を初めから厚遇するのはむりだ。零細企業の強みは収入アップが速いことだ。5年勤務でモデル年収350~400万円になる。
2年目で一部の本の買い取りと販売価格の設定ができるようになり、3年目で売り場の企画と管理、4年目で店舗と従業員の管理、5年目の肩書きは副店長という計算である。別の言い方をすれば、4,5年でプロの技術が身につくということだ。
ただし、そこからの昇給は保証できない。ここが零細企業のつらいところだ。もちろん本人が頑張って稼いでくれれば、収入は上がるだろうが、こちらが用意してあげられるリングのファイトマネーはその辺で頭打ちになる。あとは当人次第である。
もう一つのネックは営業時間だ。閉店は夜中の十二時である。毎日というわけではないが、週に2,3度は閉店まで勤務できる人でなければならない。遠くに住んでいる人は帰りの電車がなくなってしまう。ここが意外に細いネックになってしまうのである。(都心にある店ならばいいのだが、吉祥寺からだと登り電車が比較的早くなくなってしまう)。
ハードルというのはこちらが応募者に出す条件だが、古本屋の仕事を愛してくれることと、店員としてちゃんとしてくれること。この2点だけだ。本の世界は広くて深いので、無限の知識を要求される。誰でも最初は何もわからない。ずっと勉強し続けるのみである。好きでなければできない。しかも古本の世界は、本に携わる職業の中でもちょっと特殊で、本の最期にも、新しい門出にも立ち会わなければならない。
本屋は本と人をつなぐ職業なので、お客様に対してもちゃんとしていなければならない。本好きの人には(私もそうだが)人付き合いが苦手な人がいて、なかなか「いらっしゃいませ」というような接客用語を大きな声で言うことができない人がいる。そういう人は表情も硬い。お客様には愛想よくしつつ、作業は素早くしなければならない。しかし、これは「古書店員」という役割に徹すればなんとかなると思うのだが。